ペット可の今の物件に引っ越したのは3月22日。
引っ越しが無事終わり、業者が帰った後に奴は現れた。
不要になった段ボールを整理していたら、遠くから歩み寄ってくる灰色の塊があった。
それは立派なアメリカンショートヘアであった。
首輪はなく、耳に切れ込みもないので野良猫だと思われた。
それにしては体が大きかった。
近寄っては俺や家の壁に体を擦り付けてくるが、撫でようとしたり抱き上げようとすると逃げる。
そうやってしばらく遊ぶと歩き去っていった。
その猫を見たのはその一度きりではなかった。
週に1,2度は見かけた。
俺に対する態度は相変わらずであった。
甘えず、かと言って逃げず。
遠方から友達を招いた日も奴は現れた。
友達によれば、オスの4,5歳だそうだ。
野良にしては体格が良く毛並みもキレイだと言っていた気がする。
駐車場で見かけた時は、近所の人も同時に目撃していたが、
「またあの子だ」と言ったリアクションであった。
どうやら近所で有名な野良猫であるらしい。
何度か戯れているうちに、奴は俺の家の中に入りたがるようになった。
家に入れてみると、家の中でも同様にその辺の物や俺に体を擦り付けていて、おどおどしている様子はなかった。
もしかしたら、前の住民が餌を与えていたのかもしれない。
数日前にいつも通りに戯れていたら、急に腕を引っかかれてしまった。
飼い主が居ないなら飼おうと思っていた矢先にコレである。
「飼いたいけど、コイツは飼育初心者に向いてるのかな」と思いつつ、ペット用品を買うのを躊躇っている今日この頃である。